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「LIONS GOOD NEWS 2020」から約3年、世界は大きく変わりました。広告業界、コミュニケーション業界もそうです。新しいやり方や様々なバズワードがどんどん出てきています。今回の「LIONS GOOD NEWS 2023」は、こうした環境下で、より良い世界を作るために活動を行う100を超えるNPOの方々に協力してもらい、現在のコミュニケーションにおける課題を洗い出しました。そこには、「認知してもらえない」「情報が届かない」「出会いがない」など様々な悩みがありました。‘広告はラブレター’という言葉がありますが、手紙がメールなどに置き換わったように、環境が変われば情報の届け方や出会い方も変化します。どうすれば狙った人に情報が届くのか?会いたい人に出会えるのか?カンヌライオンズの過去・現在の素晴らしい作品に触れながら、あなたなりの新しい出会い方を見つけてください。

LIONS GOOD NEWS 2023 NPO調査サマリー

今回の調査で団体名や活動内容をステークホルダーに「認知」してもらうことが難しいと答えた団体は56.4%。 「理解」してもらうことが難しいと答えた団体 の52.8%、 「共感」してもらうことが難しいと答えた団体 の48.1%よりも高く、団体名や活動内容を「認知」してもらうことが課題として大きいことが分かりました。さらに「認知」の問題に加えて、発信する情報が特定のターゲットにしか伝わらないと考えている団体は 80.6%と非常に高い数値となっています。また、コミュニケーション活動が寄付などの支援に結びついていない/結びついているか分からないという団体は 69.5%、人員や予算の問題で十分な情報発信ができていないという団体は70.4%とこちらも多くのNPOの悩みの種になっています。自由回答でも「団体名や活動内容を認知してもらうことが難しい」という声が多くあがりました。中でも若者へのアプローチに悩んでいる団体が多く、活動自体に若い人の参加が少ないため、後継者問題(活動を継続していくための広報)を課題に挙げる声やデジタルでのコミュニケーションに課題を感じている様子が見られました。一方、今後強化したいコミュニケーション活動は「支援者との交流」(68.5%)、「企業との連携」(61.1%)の2点が非常に高く、自由回答でも≪支援者や企業との交流≫を課題に挙げた団体が多く、活動に関心を持つ可能性がありそうな新規の人や企業、特定のコミュニティ、パートナー団体との新しい出会いを課題に挙げる意見が多く見られました。

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LIONS GOOD NEWS 2023

コロナ禍・ウィズコロナというタイミングで直面したコミュニケーション課題

コロナ禍においてWWFは2022年10月に『Living Planet Report 2022』を発表しています。このレポートでは自然と生物多様性の健全性を測る数値が過去約50年間で69%減少していることを報告しています。こういった地球規模での「環境課題の解決」にはコミュニケーションのチカラが常に求められています。コミュニケーションの課題として感じるのは、科学的知見やデータに基づいた少し複雑な情報を多くの方々にどう適切に伝えていくか、ということ。環境課題は、多くのアクターや多くのステークホルダーが関わりますが、関係する人の数が増えるほど、それぞれの視点や思惑での言動や状況が絡み合ってきます。また、システム思考に代表されるように、複雑な環境課題は一つのシステムとして捉え、俯瞰(ふかん)した視点でアプローチしなければ、一つの部分最適での解決が結局は別の部分に課題を生み出してしまい、全体最適化に至ることができないという負のループに陥りがちです。そしてその説明においても複雑で難しいから“一言では言えない”となってしまうと、コミュニケーションにおいても、誰かに話す際にちゅうちょが生まれたり、正確を期すため根拠を盛り込み過ぎることで長文になってしまうなどもよくあります。情報の送り手の多様な意図、情報の受け取り手の多様な状況、この間を正確さだけでなく、どう“適切”につなぐか、ここに神経を注いでいます。

これらの課題に取り組むとき、まずわれわれが大切にしているのは「Theory of Change」といわれる社会課題解決の手法です。状況を俯瞰して見るため、ステークホルダーマッピングといわれる手法で、その環境課題にいったいどのような人たちが関わっているのかを書き出し、関係性を図示化していきます。つぎに直接ヒアリングすること。関わっている人たちがどんな状況で何を考えていて何をしたいと思うのか、そのインサイトを探るのです。そしてその後の具体的な戦略づくりでは、レバレッジポイントはどこか、ボトルネックはどこか、情報の送り手と受け手がエンゲージするポイントはどこかを研ぎ澄ましていきます。最後に工夫を凝らすのがクリエイティブジャンプです。このプロセスを行ったり来たりしながら、もしくはプロトタイプをまずは実行し、コミュニケーション施策を徐々に更新しながら進めていきます。このようなステップを踏みながら、よくある一般的で曖昧な言葉で放置せず、解像度を高めていきます。

次の段階では、「SAVE NATURE PLEASE」というWWFが推進している環境保全のための行動変容フレームワークを用います(https://www.wwf.or.jp/campaign/snp/)。前述のロジカルな解像度と同様、またはそれ以上に重要視しているのがエグゼキューションで、その施策が笑顔をつくれるか、深く感動させられるか、誰かに話したくなるかなど、最終的なアウトプットの表現クオリティーの管理が、伝わる伝わらないを大きく左右すると考えています。WWFが注目しているのは、行動科学に基づく人々の意識変化や行動変容です。環境課題は人々の意識や行動によって発生する一方で、解決することができるのもまた人々の意識や行動によります。フレームワークの中に「NATURE」の六つの頭文字を集めたエグゼキューションで考慮すべき行動原則があるのですが、例えば「Normal」では人は所属するコミュニティーでの社会的アイデンティティーが肝要であり、そのコミュニティー内での規範化を進めるために相互支援を行い行動の拡散を行うということ。例えば「Rewarding」では人はインセンティブとディスインセンティブに影響されがちであり、損失回避をするためには積極的に行動するということなど、多くのTIPSや成功事例に当てはめながら、表現技術をブラッシュアップしています。

こういった指針やフレームワークに加えて、誰と仕事をするのかも今後ますます重要になってくると思います。より大きな社会的インパクトを生み出すには、NGO/NPOも組織内部だけのリソースにとどまらず、共感いただける外部との協働が不可欠でしょう。部分最適に陥らずに、全体最適を考えられるクリエイティブな協力者を見つけ出さなくてはいけません。逆にそういった方々にも自分たちを見つけていただき、関心を持っていただけるように、われわれが何を考えていて何をしたいのかの発信は常にアップデートしていきたいと考えています。

このような方針に基づき、WWFジャパンが近年取り組んでいるのが、ペットとして利用され絶滅の危機にさらされる野生動物をゼロにするキャンペーンです(https://www.wwf.or.jp/campaign/uranokao)。野生動物のペット飼育についての意識調査を行った結果、絶滅や密猟や密輸などのリスクがあることをよく知らないという回答が68%もありました。これらのリスクがある野生動物を飼いたいという層を対象に、動物園の飼育員さんが野生の生態や習性など飼育の困難さやリスクを解説する動画を作成、拡散によって意識変容を目指す活動を始めたばかりですが、どんなにかわいくてもペットに適さない動物がいることを知ってほしいですし、その投げかけには多くの賛同の声が寄せられています。

いま世の中で注目すべき動き、そしてコミュニケーション活動の実践へ

いまキーワードとして注目しているのが「ネイチャー・ポジティブ」です。ニュースでは、カーボンニュートラルやサステナビリティがあらゆる方面から発信されていますが、脱炭素社会の実現に向けて、気候変動に対する国の責任と目標値が明確になった中、脱炭素への具体的な取り組みを進めるのと並行して、次は生物多様性が世界のテーマとなっています。冒頭お話ししたように、過去50年で生物多様性の喪失が69%という苦境を乗り越えるため、2030年までにそのカーブを反転し回復に転じるための動きが始まっています。2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議においては、世界中の陸域・陸水域・海域の少なくとも30%を保護区にすることなどの決定が採択されましたが、政治・経済・金融の分野、つまりは市民の暮らしに関わる分野においても、各国が具体的な目標を掲げ、それに向けた取り組みがまさにいま始まろうとしているところです。この「ネイチャー・ポジティブ」の動きにぜひ注目していただきたいと思います。

今回このサイトにて紹介されているような各所で成功している事例研究は弊会のコミュニケーションに関わるスタッフも常に行っております。グローバルで評価された各アワードの受賞事例には、社会課題解決に大きく寄与したクリエイティブアイデアが豊富に詰まっており、とても勉強になります。またスタッフが各自でアドミュージアムなどに通い、その事例解説セミナーに参加することでなぜ成果につながったのか、なぜ心を動かすのか、を深掘りして習得すべく研さんを積んでいます。気を付けているのは、自分が取り組んでいるイシュー領域に限定せず、多くの事例を、あまり考えずとにかく量を見ることと思います。本サイトではOpen AI「ChatGPT」を使用した「じゃない方検索」という体験もできますが、昨今のフィルターバブルの状況回避を無意識にも意識的にも実行して新しい出会いをつくる素晴らしい取り組みと思います。名著である「アイデアのつくり方」(著者:ジェームス・W・ヤング、出版:CCCメディアハウス)にもありますが、新しいアイデアは既存のアイデアの組み合わせであり、最初にやるべきことはありとあらゆる方面の情報の収集から始まるとしています。アイデアの確度や質を実際的に上げていくには、本サイトで紹介されている一見自分たちには関係ないかもしれないと思う事例にも多数触れ、深く読み解き、なぜ課題解決へのインパクトにつながっているのかを知ること、そして自身の偏った見方に陥らずに、ウェルカムでオープンな心持ちでいることが、とても大切だと思います。

WWF JAPAN(世界自然保護基金ジャパン)

WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年にスイスで設立されました。人と自然が調和して生きられる未来を目指して、サステナブルな社会の実現を推し進めています。急激に失われつつある生物多様性の豊かさの回復と、地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現に向けて、希少な野生生物の保全や、持続可能な生産と消費の促進を行っています。

WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン) ブランドコミュニケーション室 室長

渡辺 友則

在学中は国際関係学、コミュニケーション学を専攻。卒業後は広告会社に勤務し、広報、マーケティング、プロモーション業務を経て、コピーライター兼CMプランナーとして活躍。2007年セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでコミュニケーションズ部長、2015年WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)に入職しブランドコミュニケーション室長に就任。現在、地球環境保全の意識変容・行動変容の推進に取り組んでいる。

We interviewed over 100 nonprofits,

and found that communication barriers are hindering new connections.